世界の食の未来へ 細胞農業と共創が拓く新しい価値

今日は、当社グループが取り組む「細胞農業」領域について、先日シンガポールで開催された展示会の様子とあわせてご紹介したいと思います。

細胞農業が生み出す新しい食の選択肢

「細胞培養食品」聞き慣れない言葉かもしれませんが、動物や植物の細胞を育てて作る新しい食品で、いわゆる「培養肉」もその一つです。
人口増加、気候変動、資源制約など、世界的な課題を背景に、細胞農業は次世代の食料生産方法として注目が高まっています。
当社グループは、自動車分野で培った精密成型や材料技術を活用し、この新領域で社会課題の解決に貢献することを目指しています。
その取り組みの一環として、2022年からスタートアップ企業インテグリカルチャー社*1が主宰する「CulNet®(カルネット)コンソーシアム」に参画し、細胞農業の標準的なサプライチェーン構築に向けて、共創活動を進めています。

シンガポールでの展示会 社会実装が進む最前線

細胞農業、とりわけ食料分野では、世界に先駆けてシンガポールが2020年に培養肉の製造・販売を承認しました。
現在もフードテック*2企業が多数集まり、アジアで最も社会実装が進む地域の一つです。
当社も先月、シンガポールで開催されたAgri-Food Tech Expo Asia 2025(以下、AFTEA 2025)に「細胞培養バッグ」を出展し、私自身も会場を訪れました。
今回展示した「細胞培養バッグ」は、細胞を大量かつ安定的に培養できることを目指した製品で、以下のような特長があります。

-従来の2倍以上の容量を生かせる構造:高密度培養が可能になり、生産性が向上
-培地交換回数の削減:コスト削減と省力化につながります
-装置を減らしたシンプルな仕組み:省スペース化に貢献し、研究環境の自由度が拡大

会場では、当社技術への関心が高く、多くの来場者から実装性やスケール化に関する質問をいただきました。
私も、シンガポールのレストランで実際に提供中の「培養ウズラ肉」を試食しましたが、品質も高く、技術の実用段階がすぐそこまで来ていることを実感しました。

共創が未来を拓くインテグリカルチャー社との対話から

展示会開催中、インテグリカルチャー社の羽生雄毅代表と意見交換する機会がありました。
羽生代表からは、「細胞培養バッグで、生産性や作業性が向上し、研究開発のスピードが上がります。」と期待の言葉をいただきました。

また、「培養肉の生産量が増加すれば、家畜の数を調整できる可能性があります。その結果、メタンガスの発生や牧畜のための森林伐採などを抑制できるため、カーボンニュートラルにつながります」と地球環境の保全にも貢献できることを強調されました。
私からは、「社会課題と向き合うバイオ領域では、パートナーシップを通じた共創が不可欠であり、今後さらなる協働を期待しています」とお伝えしました。
当社グループは、2029年に向けた目標「2029V」のなかで掲げる「未来を開拓する人・仲間づくり」を重要な柱としています。
細胞農業領域での取り組みは、その象徴的なモデルケースと言えます。

社内外の力をつなぎ、持続可能な未来へ

食料、環境、資源といった複雑化する社会課題に対し、単独企業で解決できる範囲には限界があります。
だからこそ、社内外の知恵や技術を組み合わせ、新たな価値を共創することがますます重要になります。
細胞農業の取り組みは、研究部門だけでなく、事業部門、コーポレート部門を含む多様なメンバーの連携によって成り立っています。
皆さん一人ひとりが、日々の業務の中で外部とのつながりを意識し、オープンな姿勢で挑戦していただくことが、当社グループの未来を切り拓く力になります。
これからも、私たちは「社会に必要とされ続ける企業」であるために、新たな領域へ挑戦し、共創を通じた価値創造を推進していきます。

*1インテグリカルチャーhttps://integriculture.com/
「CulNet」はインテグリカルチャー株式会社の登録商標です。

*2フードテック…食品産業にテクノロジーを取り入れて、新しい価値を創出するビジネス分野

関連リリース:シンガポールに続いて、細胞培養食品の社会実装が進むオランダでの展示会にも出展
https://www.sumitomoriko.co.jp/news/2025/svnbqu000000109d-att/n51910823.pdf

住友理工 社長ブログ

本ブログの内容は、社長 清水和志がさまざまな機会に話した内容や、文章として発信したものを、事務局である住友理工株式会社 広報IR部がとりまとめた上で、ブログに掲載しております。内容の概要は社長に了解を得て掲載しておりますが、掲載責任は広報IR部にありますことをご了承ください。